株式会社やまやコミュニケーションズ

株式会社やまやコミュニケーションズ

iFieldを活用して工程をまたいだ
作業者の流動を見える化

株式会社やまやコミュニケーションズ プラント部 デジタル戦略室 様
作業者の流動による多能工化の推進で生産性を向上

株式会社やまやコミュニケーションズ

「やまやの明太子」で知られる辛子明太子メーカーのやまやコミュニケーションズ。 ワクワクする食文化を提案し、幸せな社会の創造に貢献することをコンセプトに、 近年では辛子高菜や調味料、酒造、産直野菜や果物、お米などの農産物も手掛けるほか、 国内外でもつ鍋店を展開するなど事業領域を広げている。 2023年3月には、3つの工場を統合する形で新工場が竣工、 多能工化の推進により作業者を流動させながら生産性の向上を目指すこととなった。 それに際して、従来手作業で行っていた作業時間の集計を、 iFieldの導入により作業者の位置情報を取得・解析し、 自動的な作業時間の収集と生産性の定量化を実現した。


作業者の流動を把握して生産性向上を図る

従来、同社ではスケトウダラの卵である原卵から塩たらこを生産する原料処理を行う工場、 塩たらこからお土産用の明太子を生産する工場、 バラコと呼ばれるたらこの粒に味付けをして業務用の明太子の生産を行う工場の3つの工場を運営していた。 2023年3月に新社屋が竣工した際に3つの工場は統合され、新工場が稼働することとなった。

3工場とも多品種少量生産であることに加え、手作業が中心で人に依存する作業が多く、 生産する品目によって生産性が大きく変動していた。そこで新工場では、 作業者の多能工化を推進し流動化させることで生産性を向上させ、 各工程での生産性の凸凹をならしていく方策が打ち出された。 そのためには各工程での作業時間の正確な把握が必要であった。

しかし従来は、生産性向上の指標は時間測定が主で、 作業者が他の工程へ流動した記録は手作業だったことから、 流動記録を管理するのは手間もかかり精度面でも限界があった。 こうした課題を解消するために作業者の位置情報を基に工程の滞在時間を自動で記録できるiFieldの導入に至った。 導入により作業者の各工程の作業時間や工程間の流動を定量的に把握することで、生産性向上を図ることとなった。

作業者用プレートにビーコン/工場内のゲートウェイ設置例画像
<左キャプション>
作業者が首から掛けるプレートにビーコンを封入
<右キャプション>
工場内のゲートウェイ設置例。一部屋内で複数の工程がある場合はゲートウェイ受信設定を調整

ゲートウェイの適切な設置と膨大なデータの圧縮

位置情報の取得は、作業者がBLE ビーコンを携帯し、 現場にゲートウェイ(以下GW)を設置する方式を採用した。 導入したビーコンは200個、GW は45カ所に設置したが、 水産加工の現場であるため塩や水への対策が必要だった。 ビーコンは包装し、それを作業者の首から下げたネームホルダーに入れて所持、 GWは耐候ボックスに入れ、水がかかりにくい高さに設置した。 なお、GW からiField への通信はSIM 通信を基本としつつ、電波の弱い箇所はWi-Fi 通信で行っている。

GWの設置にあたって、設置位置の検討段階から綿密な打合せを重ね、部屋ごとに適切な数を割り当てた。 1つの部屋内に複数の工程がある場合でも、GW の受信設定の現地調整を行い、工程の滞在判定を可能とした。

実際に取得したデータを分析した結果、 2つの課題が顕在化した。一つは膨大なデータ量、 もう一つは作業者の移動時に途中のGW に検知されてしまうケースだ。 データ量の問題は、連続する部屋での滞在時間を集計して圧縮処理を行うことで解決した。 移動時の検知については、 連続する滞在のあった部屋と部屋の間でわずかに検知された部屋の判定は移動中のデータとみなして集計から除外することとした。 現在も場所によって隣接するGW に誤検出されることはあるが、発生割合を確認して補正することで回避した。 このように同社では自動的に蓄積される生データを工場の運用と突合して一部加工・除外することで活用しやすいデータ作りをしている。

さらなるデータ活用も視野に

データ活用として、工程ごと作業者ごとの滞在時間をエクセルで集計し、 各作業者の工程別の作業時間や業務割合を算出している。 これにより各作業者の流動が詳細に把握できるようになった。 例えば、洗浄工程の人手不足で原料処理工程から作業者が流れたり、 梱包工程から加熱殺菌工程へ流動したりする様子が見える化されたほか、 焼成工程では9月は減産のため人手が余り、他の工程への流動していることなども確認された。 このように多能工化の推進に必要な作業者の流動の見える化が、iFieldの導入により可能になった。 また、労務データと各作業者の業務割合を組み合わせて工程ごとの総労働時間を換算して、生産性の算出にも活用した。

現在の課題としては、同じ部屋で隣接する工程のGWに誤検出されるケースがあることだ。 現状はデータの補正を行っているが、今後は、iField の様々な測位技術と連携できる特性を活かし、 高精度の測位方法による滞在検知の採用を検討している。

「iField の導入により、従来細部まで把握できなかった作業者の流動状況の見える化が実現し、 工程ごとの生産性を従来よりも高いレベルで把握するという目標を達成することができました。 今後については、生産管理を現在のマクロ管理から生産品目ごとのミクロ管理に踏み込むことで、 実際の生産性を考慮した設定原価の検証につなげたり、検出データを多能工化に向けてスキルマップに活用したり、 災害時の従業員の安全管理や生産時の作業者のトレースバックなどへの適用も進めていきたいと考えています。」 (プラント部デジタル戦略室長 浜野潤一氏)

iField Next 屋内測位画像

システムのポイント

  • 作業者の工程の滞在時間から各作業者の工程別の作業時間を自動的に収集
  • 労務データと作業者の業務割合を組み合わせて工程ごとの総労働時間を換算し、生産性を算出
  • 作業者の工程の流動を見える化し、作業者のスキルマップを作成。多能工化の推進材料に活用

お客様プロフィール

株式会社やまやコミュニケーションズ

福岡市に本社を置く1974年創業の食品メーカー。 「九州から、やまやスタンダードを。」をビジョンに掲げ、 辛子明太子の製造・販売を主軸に明太マヨネーズやドレッシングなどの調味料、 九州産の食材をブレンドした出汁、辛子高菜の製造販売のほか、もつ鍋店舗( 国内36店舗・海外6店舗)の運営や、 酒の製造・販売や産直野菜、果物、米などの農産物と幅広い事業を展開する。 「新しい九州」を発信し続けており、2023年には割烹料理店「膳」を旗艦店としてオープンした。

業種
製造業
目的
現場稼働の定量化、多能工化の推進

導入サービス・ソリューション